一部の機種では、タッチパネルや音声認識機能が搭載され、ユーザーの入力負荷も軽減され、これまで問題とされていた「操作性」も改善されつつある。 以上の2つの要因により、これから携帯電話を用いた法人向けアプリケーションの利用は促進されていくだろう。
こうした外部環境の変化を受け、アプリケーションベンダーやシステムインテグレーター各社は、携帯電話を用いた法人向けアプリケーションをグループウェア以外にも提供し始めている。 中でも有望と考えられるのは、携帯電話を利用した日報入力や顧客データベースの参照などを可能にするSFAである。
SFAは、営業部門を抱える企業には共通してニーズが存在しており、企業ごとにカスタマイズが必要な要素も少ないため、業界を越えて横展開をしやすい。 端末の高機能化にも後押しされて、導入を検討する企業が増加している。
また、営業要員や保守要員を活動エリアに最適に配置して、顧客のもとに迅速に派遣するために、携帯電話に搭載されたGP機能を活用するソリューションも出始めており、携帯電話を利用したSFAはこれから本格的に普及していくと考えられる。 携帯電話を用いた受発注情報の入力など、基幹業務系のソリューションも展開されているが、現状では企業ごとにカスタマイズの必要』性が高く、同じ業界でも横展開するのが難しい状況にある。
また、非常に多くの文字入力をともなうことを考えると、当面は携帯電話を利用した基幹業務系のアプリケーシヨンが普及するとは考えにくい。 以上のように、「BREW端末やスマートフォンの登場」、「無線ブロードバンド環境の整備」により、各ベンダーがモバイルソリューシヨンを提供し始めたことで、携帯電話を用いた法人向けアプリケーションに明るい未来が開けてきた。
しかし、大きな課題も存在している。 前述のように、指紋認証機能や遠隔操作によるデータ消去のしくみなど、「情報漏洩」リスクへの対策が講じられ始めてはいるが、ノートPCと比較すると、携帯電話に対してセキュリティ面での不安を感じている企業は多い。
そのような企業に、携帯電話が安全であるということを認識させなければ、携帯電話を用いた法人向けアプリケーションの利用は促進されない。 そのため、携帯電話事業者やベンダー各社は、「携帯電話はPCと同等に、セキユリテイ機能が充実している」ということを、ユーザー企業に啓蒙実証していかなければならない。

N、K、Vの携帯電話事業者3社は、携帯電話を企業。 の内線電話として利用する「モバイルセントレックス」を市場に投入し、法人契約の獲得を本格化し始めた。
モバイルセントレックスの方式は各社各様であり、Nは、Fと無線LANのデュアル端末である「N900i」を利用し、企業内に無線LAN環境を構築して、構内では無線LAN経由で内線通話を行う方式を用いている。 一方、Kは、企業内に専用の携帯電話設備を設置し、Aの携帯電話を内線電話として利用する方式を用いている。
また、Vは、N方式やK方式と異なり、ユーザー企業内の設備設置工事は不要で、ポーダフオンの3G端末を内線電話として固定料金で利用する方式を用いている。 モバイルセントレックスは、まだ普及の初期段階であるため、導入数のみで優劣を比較できないが、携帯電話事業者3社のサービスが出そろった2004年11月からおよそ1年が経過した現時点では、N方式の導入実績が最も多く、有望であると見られている。
特に2005年に入ってからは、PBX販社やシステムインテグレーターが、N方式を用いて、端末台数が数十台から導入できる中小企業向けモバイルセントレックスを提供し始めており、ユーザー企業の高い関心を集めている。 一方、K方式は、PBX販社やシステムインテグレーターにより拡販されておらず、2004年11月のサービス開始当初は最小導入台数が1000台であったため、ターケットが大企業に限定されていた。
2005年4月に、端末の最小導入台数をOOO台から300台に減少させることで、中堅企業にまでターケットを広げるという対策は講じたものの、現状での導入実績は少ない。 そのため、Nに対抗して、中小企業向けには無線LANを用いたモバイルセントレックスを展開していく意向も示している。
Vフォン方式は、多額な初期投資を必要としないため中小企業からの反応がよいが、通常の携帯電話網を利用するため保留や転送などができないという問題がある。 すでにPBXを抱えている企業が導入する際の障壁は高く、既存PBXとの連携を視野に入れてサービスを展開していくことが、今後の課題になる。
携帯電話事業者各社がこのような動きを見せる中、PHS事業者であるWは、音声、メール、パケットデータ通信がすべて定額になる料金プランを投入した。 社内外問わずWの端末同士は定額になるという、わかりやすいメリットを訴求することで法人契約の獲得に乗り出した。

すでにいくつかの企業で導入されており、内線通話が無料になるという点では、携帯電話事業者が提供するモバイルセントレックスと競合する。 今後は、通話コストを削減したいが、投資の余力がない小規模事業者を中心に、導入が進むと考えられる。
2005年は中小企業向けの安価なサービスが登場したことで、モバイルセントレックスの導入障壁はかなり低くなった。 実際にモバイルセントレックスの導入を検討する企業が、サービス開始当初より増加しており、これから市場は拡大していくだろう。
また、将来的にWiMAXの普及で無線ブロードバンド環境が整備され、SkyPEを利用できる携帯電話なども登場すれば、システムインテグレーターやPBX販社がSkyPEを利用したモバイルセントレックスを展開する可能性もある。 その場合、企業内の無線LAN環境だけでなく、公衆無線LAN環境下でも無線LAN経由での通話が可能となるため、ユーザーの利便性がより向上し、モバイルセントレックス市場の追い風となるだろう。
このように市場に追い風が吹いてはいるが、モバイルセントレックスが本格的に普及するには、まだ解決すべき課題も残されている。 Nが展開している、あるいはKが展開意向を示しているモバイルセントレックスは、無線ANを利用するため、ユーザー企業のセキュリティや通信品質に対する不安をまだまだ払拭しきれていない。
現実問題として、構内の無線LAN環境の構築はシステムインテグレーターのノウハウに頼っている状態であり、まだ十分に技術が確立されているとはいえない。 そのため、電波干渉の問題で通信品質が悪化し、音声通話に利用できないといった不測の事態も生じている。
端末についても、バッテリーなど性能面での問題や、対応機種が「N900i」と「MOOO」の2種類のみに限定されているという問題がある。 一方、Vフォン方式のモバイルセントレックスは、先に述べたように既存PBXとの連携ができないといった問題がある。
モバイルセントレックスが本格的に普及するのは、これらの技術的課題が改善され、端末の機能や性能が向上し、機器の品ぞろえが充実してからだろう。 BtoBtoCモバイルソリューション市場の課題と今後の方向性。


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